「将来、自分の学校を開きたい」7年生のエリザベスちゃんが話してくれたこと

カバンにリンゴとクッキーを詰めて、町を歩いています。メインの道を外れて住宅街に入ると、どこからか子ども達が私の名前を呼ぶ声が聞こえます。声の方へ歩いて行って、「やあやあ、ここが君のお家なんだね」と言って、リンゴとクッキーを食べながらお喋り。「何年生なの?」「学校はどう?」「お家はどう?」「兄弟は何人いるの?」くらいのお喋りだけれど。
「じゃあまた月曜日に学校でね」と言ってまた歩き始めます。

7年生のエリザベスちゃんの家には、行きたいなぁと思っていました。彼女がゼンバ族の子というのは知っていたので、ゼンバ族の人達が多く住むオトゥデンバという地区へ行ってみました。

「エリザベスムレレのお家を知ってる?」とあちこちに聞いて回っていたので、ちょっと怪しいアジア人だったかもしれません。情報はなかなか得られないし、今のオプウォは日中38℃ほどになる暑さ。「月曜日に学校で会えるなら、その時にお家を聞いてまた来ようか・・・」とも思いました。

その時、向こうから7年生の女の子が歩いてきました。「エリザベスムレレのお家を知ってる?」と聞くと、「知ってるよ!まっすぐ行って、緑の建物を右に曲がって、その後左に曲がったらあるよ」と教えてくれました。ちょっと弱気になっていたので「遠いかなぁ」と聞いてみると、「遠くないよ!私たちはこれから村へ帰るから一緒には行けないけど。その辺だよ!」とのこと。ニコニコ教えてくれたので、もう少し行ってみることにしました。

無事お家に到着

緑の建物とは、オツゼンバゲストハウスのことのようでした。この宿は一泊一室250ナミビアドルで泊まれるらしい。2人でシェアすればaamenyより安くない??泊まってみたいなぁ・・・家庭訪問のついでにちょっと宿泊地リサーチも挟みつつ、エリザベスちゃんのお家を目指します。

宿の女性に聞いたり、通りすがりの男の子にエスコートしてもらったりして、無事、お家に到着。ナミビアの人達は助けが必要な人に対して本当に親切です。

エリザベスちゃんは普段はホステルで生活していて、このお家は叔母さんのもの。お母さんは亡くなってしまったから、お母さんの妹さんである叔母さんが彼女の面倒を見ています。

勉強に向かう態度もよく、成績もよく、色々な場面で彼女の人間性が素敵だと思っていた私は、彼女に依頼したいことがありました。叔母さんや家族の皆さんに挨拶して、少しお喋りした後、エリザベスちゃんと話して、「好きな言葉を教えてほしい」というお願いをしました。

「Loveという言葉が好き」

エリザベスちゃんが選んだ言葉は「Love」
彼女は私に文章を書いて、こんな風に伝えてくれました。

愛は途切れないし、強いもの。そして誰かに幸せを届けることができるものだから、私はLoveという言葉が好き。
もし私が周りの人に愛をもって接したら、みんなの人生に幸せを届けることができる。家族が愛し合っていないとしたら、それは本当の家族じゃないと思う。愛は冗談とは違うから、今日は愛して明日は嫌いっていうのは愛じゃない。愛は誰かを思ったり、尊敬したりする、心の約束だと思う。

エリザベスちゃんの言葉を聞いて、学校で見た彼女の色々な姿を思い出しました。朝、1時間目のアーツの授業に行くと、担任の先生の机を拭いている姿。情報の授業で作った絵本を、読んでみて、と貸してくれたこと、休み時間に教室をのぞきに行ってみたら、聖書のカードを見ていて、好きなフレーズを教えてくれたこと。

そして、叔母さんに引き取られ、たくさんの子ども達と生活している姿も。聖書の言葉のコピーではなくて、彼女は「人を愛そう」と行動していると思います。

「人からの愛を感じる時ってどんな時?」

私から、少し意地悪な質問をしてみました。エリザベスちゃんは色々と考えながら、

家族が私の心配をしてくれた時。友達が、自分も喉が渇いているのに飲み物を分けてくれた時。先生は厳しい時もあるけれど、勉強を教えてくれるし、困っている子に生活用品を買ってくれているのも知ってる。だから私は色々な人に愛されていると思う。

エリザベスちゃんの話を聞いていて、彼女にとっての愛は大きなものだけれど、小さなことの積み重ねなのかな、という気がしました。

「来年は中学生になるけれど、どんな1年にしたい?」

彼女はまだ来年行く学校が決まっていなくて、今でも入学の許可を待っています。間違いなく学年で10番以内に入るような子なのに、まだ決まっていないのにはびっくりしました。いい学校に入学が決まってほしい。彼女は、来年のことをこんな風に話してくれました。

来年は、いい学校に入って、いい成績で進学できるように勉強を頑張りたい。家族や先生、友達に対して尊敬の気持ちを忘れずに、周りの人や自分自身のことを愛したい。中学校でもよい友達を作りたい。勉強を頑張って、家族を幸せにしたい。

「将来の夢はある?」

私から彼女に、どんなことが好きで、人生の中でどんなことをしたいと思っているか聞いてみました。彼女の答えは、

自分の学校を開きたい。自分の家で、子ども達に勉強を教えたいと思っているの。だから先生になろうと思ってる。

彼女のように、自分のためにコツコツ勉強ができて、人のために行動できる人なら、きっと素敵な教師になるだろうなと思います。あまりに素敵なのでちょっと泣いちゃいました・・・そっか、先生になりたいんだ、自分の学校を持ちたいなんて・・・(涙)

さて、その後はエリザベスちゃんに「Love」を描いてもらったり、家族で写真を撮ったり、魚料理とパップを昼ごはんに出して頂いたり。エリザベスちゃんは私に、ヘレロ語やゼンバ後の讃美歌を教えてくれ、英語の昔話「King Gilgamesh」のお話も語ってくれました。お家でも、学校で見る姿と変わらず、まじめで人のために行動する彼女。色々とお話をして、エリザベスちゃんのことがもっと好きになりました。

魚料理とパップ。おいしかったな~!

今回書いている文章は、もしかしたら某所に載せていただくことになるかもしれません。また詳細が決まったらお知らせしたいと思います。

おしまい★